浮世離れ

昨日、親戚のお兄ちゃんが治療に来た。

お兄ちゃんには
小さい頃から勉強を教えてもらったり
小学生の頃にゴダイゴや原田真二の
コンサートに連れて行ってもらったり
毎週スキーに連れて行ってくれたりと
とにかくよく面倒をみて可愛がってくれた。

お兄ちゃんは何と申しますか…
実家がとても裕福な旧家なので
働かなくてもいいのよね。

何やら『禅』について色々研究をしているようですね。

彼は博識があり
とても品のある人なんですが
何と申しますか…
浮世離れしているのね。

あくせくと働かなくていいから。

またあくせく働かないから
面倒な人間関係にもまれた経験もないので
ピュァな人なんですね。

まさにTHE浮世離れ!という人。

昨日も治療が終わると
「チヒロ…
『遠くから鐘の音が聞こえた』と
『私は遠くから鐘の音を聞いた』の違いがわかるかい?」

また始まったよ…禅問答的なヤツが。

あのですね…
こちらは仕事中なんですよね。

他の患者さんが待合室でお待ちなのよね。

お兄ちゃんはそういった空気感は全く読めないのね。

浮世離れしているから。

私は手短かに
「前者は受け身な印象を受けるし
後者は自己主張があるわね。
後者の方が西洋的なんじゃないの?」と、言うと

嬉しそうに
「お!チヒロ!さすがだなぁ…。
『遠くから鐘の音が聞こえた』というのは
非常に奥ゆかしい日本人の考え方なんだな…(遠い目)」

いやいや…遠い目とかしてないでくださいよ。
センチメンタルになっているし…。

こっちは仕事中なんだからさ…と
ちょっとイラッとしてしまったんですな。

「でもお兄ちゃん、
結局
『私は遠くから鐘の音を聞いた』という人じゃないと
世界を相手に政治なんかできないからね。
納税者としては
あまり“奥ゆかしい”人だと困るわけよ。
私だったら
『私がっ!鐘の音を鳴らす!』ぐらいがいいわね。
頼もしくて。」と、言ったんですね。

お兄ちゃんは
もっと色々と話したかったのでしょうけど
ぐうの音も出ずに
「ハハハ…チヒロらしいな」と、言って帰っていった。

後で保険証を見ると
お兄ちゃんも還暦をとっくに過ぎたんだなぁ…と、驚いた。

お兄ちゃんはとても素敵な奥様がいて
子供がいないから
いつも奥様と2人で行動を共にされている。

誰かと話をしたいんだろうなぁ…と、思った。

私の父が生きていた頃は
父とよくお酒を交わしていましたね。

彼は昔から禅問答の様な話をするから
うちの父にも
「まったくもう…お前の言っている事はまどろっこしい。
結論を早く言えよ」と、よく言われていたけれども
仲良しだった。

私は小さい頃はお兄ちゃんの言っている事が難し過ぎて
チンプンカンプンでしたけれども
最近では父の代わりに
お相手出来る年齢になったと思う。

時間にゆとりがあって
お兄ちゃんの好きなワインなんかを飲みながら…なら
いくらでも彼の話にお付き合い出来るんだけどな。

しかし「仕事が忙しくて」と、言って時間を作らないと
大切な人は突然いなくなってしまう…というのは
最近痛感する様になりましたから
お兄ちゃんの為に時間を作らないとなぁ…と、あらためて思いました。

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昭和大橋歯科医院 Dr.chicoの日記

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