Hさん

Hさんは家族ぐるみで
昔から父のクリニックに通って下さっていて
父が他界した現在、弟の元に通って下さっている。

また
わざわざ私のクリニックの方にも通って下さっていて
彼が治療におみえになると
ついつい父の昔話になる。

「実は、一度だけ
亡くなった先生のご自宅に
お邪魔した事があるんですよ」と、おっしゃった。

ある日、
Hさんは朝の5時頃
手を切ってしまい
父のクリニックに行ったらしい。

もちろん診療時間前。
朝、5時ですからね。
クリニックは閉まっているから
自宅の方に行かれたそうだ。

すると父が
「Hさん、
俺、今、朝飯を食っているから待っていてくれる?」と、言い
Hさんは父の食卓に一緒に座って
待っていたそうだ。

その後、一緒に隣の建物の診察室で
Hさんは手を3針縫合してもらった後
「Hさん、朝飯まだだろ?
食っていけよ」と、父に言われたらしい。

「そういう先生のお人柄が
大好きだったんですよね」と
仰って下さった。

父は戦闘機関係…
特に飛行機と戦車が
大好きだったわけですが
クリニックの待合室に
ラジコンで動く大きな戦車がディスプレイしてあり

「アホくさ…。待合室に飾るかなぁ…普通。」と
私はせせら笑っておりましたが
Hさんも戦車が大好きで
「あの戦車はいいんですよねぇ…。
先生と、よくその話で盛り上がってねぇ…」と
懐かしそうにされていた。

「ご迷惑でなければ
もらって頂けますか?」と、申し上げたら

「えぇっ?!」と、驚かれ
「あれは非常に高価な物ですし
私の様な者が頂くわけにいきませんよ!」と、仰る。

それでも是非…と、お願いしたら
非常に喜んで下さった。

おそらく父も
大好きなHさんにもらって頂けて
喜んでいるだろうな…と、思うのです。

父は私にとって
一番長く付き合いのあったオトコですから
彼の喜びそうなコトはわかるんです。

彼のお得いの
ちょっといたずらっ子の様な笑顔で
「チヒロ…、お前…いい事をしたな。」と言われるのが
私のアイデンティティの源でしたから
今回も例のニヤリとした顔を
してくれていると思います。

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昭和大橋歯科医院 Dr.chicoの日記

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