遭遇

久しぶりにその著者の才能に
嫉妬すら覚える様な本に遭遇。

『ねにもつタイプ』 岸本佐知子著 筑摩書房

 なぜ「ちょんまげ」なる奇怪な髪型を受け入れることが出来るのか。

 放火の理由はなぜ決まって「むしゃくしゃして」なのか

 会社勤めの身で上司から「よしなに」と書かれたメモが回ってきた時の対処法


何気ない日常の出来事から
とんでもない着想や疑問がふくらんでくるのがもう…面白い。

この週末も都内への新幹線の中で独り
「プッ、プーッ」と、笑いをこらえるのに苦労した。

しかし
この岸本佐知子女史なる方…一体全体何者なのか。

プロフィールを見てみると
上智大学文学部英米文学部卒。
奇想系小説の翻訳者。

なるほどねぇ…。

時々、患者さんに「先生のブログって面白いですよね」などとお世辞を言われ
いい気になっておりましたが
このような圧倒的才能を前にすると
あらためて己の物は素人散文だなぁ…と、痛感させられ
ブログの書き込み意欲が一気にうせる。

この「ねにもつタイプ」の中身一部抜粋

『その町がどこか妙だと最初に気がついたのは、引っ越してきた翌日に買った卵だった。
駅前の商店街にある食料品店で買ってきたそれは、黄身が完膚なきまでにぺちゃんこだった。鮮度を疑った私はその卵を食べるのを諦め、数軒先の別の店で買いなおした。一個めを割ってみると、黄身が二つある“双子”の卵だった。ラッキーだ。ところが次もまた双子だった。次も、その次も。とうとう12個すべてが双子だった。何とはなしに、ぞっとした。
そもそも、この商店街というのが妙だった。ターミナル駅から一つ目という便利な場所であるにもかかわらず、活気がまるでない。店をやっているのは、陰気で因業な老人ばかりで、とうぜん愛想はなく、品揃えは悪く、値段は高く、味はまずかった。そのわりに、なぜか主張だけは妙にあって、看板や店先の日除けに <ふれ愛、しま専科? 癒しのそば店> とか <デジタルからアナログへ!私たち、時代遅れのクリーニング屋です>とか <感念物語 夢・無限大> とか <素粒子<美粒子 お肉新世紀> などといった、意味不明の、しかし微妙に神経にさわるキャッチコピーが大書きしてある。』

どうです?

私はこれ…大好きです。

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昭和大橋歯科医院 Dr.chicoの日記

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