昭和大橋歯科医院 Dr.chicoの日記
前橋の昭和大橋歯科院 院長Dr.チコの日々の想いを綴っています。
ある朝の事
基本的に入れ歯というのは
その場で修理可能な場合が殆どです。
しかし
その日はとても忙しく
近所のMさんには頭を下げて
「Mさんごめんねぇ。
明日の朝一番で届けるから
とりあえず今夜だけ預かっていい?」とお願いをして
翌日、仕事前に届けることにした。
Mさんご夫婦は
「えぇっ?!先生、自ら届けてくれたのぉ?!」と、恐縮されておられましたが
“先生”なんて偉いもんじゃねぇですから…
ただの呑んべぇですから…と
こちらがかえって恐縮していると
「先生…銀杏食べる?うちで採れたんだけど」とMさんの奥様。
みるともう…それはりっぱな銀杏で本当に美味しそう。
もちろん頂戴いたしますと、申し上げると
フライパンで炒るのではなく
茶封筒に入れてふたをして
電子レンジで3分加熱すると美味しく食べられるわよと
料理法まで伝授して頂いた。
私が大喜びしていると
M夫妻は
「あれかねぇ…先生は酸っぱい白菜の漬物なんか食わねぇだろぉ?」と、仰るので
白菜の漬物とタクアンはですね
酸っぱくなったら塩抜きして
ごま油と鷹の爪と一緒に炒めると
とっても美味しいから大好きですよと、言うと
もう山のようなお漬物を下さった。
嬉しい〜っ!
(ちなみに…この塩抜きした古漬け。ごま油の代わりに
オリーブオイルで炒めて黒コショウを振り更に炒め
耐熱皿に並べ
モッツァレラチーズとパン粉をたっぷりかけて
オーブントースターでチーズがとけるまで温めても美味しいですよ!
普通のピザ用チーズでもいいですが
古漬け自体に塩分が多いですから味を調節してね♪)
今回は色々と頂戴しちゃったな。
こんな事なら
毎朝、ご近所中入れ歯を届けようかしらん♪
「しっかし…、Mさん。
これだけあれば暫らくの間は酒の肴に困らないわ。
本当に助かるぅ〜」と、言うと
「あれ?先生、酒やめたんじゃねぇん?(やめたんじゃないの?)
せんだってぇ…(以前)、
先生がさ、“アタシは禁酒したから持ってって”って
なっからの(かなりの)日本酒をくれたんじゃねぇん?(くれたでしょう?)」と、笑われ
「え?!そうだったっけ?!
いやぁ…全然記憶にねぇんだけど…
多分…禁酒をやめたと思うよぉう。
だって毎晩深酒してるしぃ」と、恥ずかしい思いをしました。
「だったらMさんっ!それだけは返して頂戴っ!」(←酒がからむと卑しい私)
さて…
その後…
ビニール袋一杯になった漬物を両手に持ち
清々しい気持ちで帰路につく途中
公田町の田園風景を眺める。
ここの土地は
何かご縁があるのかぁ…なんて勝手に思うことがあるのですね。
私の実家の昔の風景に似ているですね。
人もそう。
みんなご近所づきあいがあって
当時…やれ本家だの分家だのと面倒な部分もありましたが
温かみがありましたよ。
最近では
大型スーパーやら
アパートやマンションが立ち並び
その景色は全く変わってしまい
当時の年寄りは皆他界してしまいましたけど…。
例えば今朝のMさんご夫婦などお話していると
亡くなった祖母を思い出す。
その中で
思い出しては目頭が熱くなる苦い思い出がある。
娘時代…。
冬の早朝、某大学の男の達が
スキーに行くために
私の家まで迎えに来てくれた時の事。
駐車場で車に荷物を積んでいると
祖母が
「寒いのにご苦労様ですねぇ」と言いながら
お味噌汁とお漬物を
お盆に入れて持ってきたわけですよ。
80歳を過ぎた彼女の腰の曲がったその姿とお漬物の取り合わせが
多感な年頃だった私は
何だかとても格好悪くみえて気恥ずかしく
「もうっ!おばあちゃんっ!そんなモノいらないってばっ!」と
烈火のごとく怒鳴った覚えがある。
結局祖母は
寂しそうにお盆を持ったまま
自宅に引き返さざるをえなかったわけですね。
後で友人達に「あんな言い方はないだろっ!」と叱られましたが
当時はとにかく嫌だったわけです。
あれから年月が経ち
私も当時よりはやや物事がわかる様な年齢になると
本当に申し訳ない事を言っちゃったなぁ…と
後悔で胸が痛くなる。
家のお漬物を客人に出すという事は
最大の歓迎の印なんですよねぇ…。
今だったら
「ありがとう、おばあちゃん。」と、御礼を言って
「うちのおばあちゃんのは最高だから
みんな食べて行って頂戴」と、間違えなく言えるのになぁ…。
若いという事は時には
経験不足からか
色々な間違いを犯すものなのですなのね…。
そんな事を考えながらの
Mさん宅からの帰り道なのでした。