昭和大橋歯科医院 Dr.chicoの日記
前橋の昭和大橋歯科院 院長Dr.チコの日々の想いを綴っています。
早雲が…
早朝、母がいつもの様に
クリニック周りの草むしりをしていた。
ちょっと顔を出して
「あのさ…早雲が悪性リンパ種になったんだよ。」と、言うと
彼女は「えぇっ?!!」と、暫く絶句した後
「困ったねぇ…」言う。
そして
「クリニックが大変じゃないの?」と、聞いてきた。
変な事を言うなぁ…と、思った。
あれ?と、思ったので
「早雲って”犬”の事なんだけど…。12年もいるんですけど。」と、言うと
「え?犬?ソウウン…。」と、暫く考えて
「何色の?」
「黒い子よ!!!!何度言えば覚えるのぉ?!!」
「お前の所はいっぱいいるからねぇ…。」
母はおそらく、早雲という名の”うちのスタッフ”が
病気になった…と、思ったのでしょうね。
となると、母親ですから娘が大事。
ですから娘の仕事が心配だったのでしょう。
なので
「クリニックが大変じゃないの?」と、聞いたのだと思います。
ですから
犬だと聞いて
「では仕事への影響はないのだかな」と、
もしかすると安心(?)したのかもしれません。
しかしその犬ですが
私にとっては大切な大切な家族ですから
意気消沈していたわけでして
やれ抗がん治療とか
やれ輸血とか
そういった説明をしておりましたら
母が「保険がきかないんだよね?」と、言う。
結局、人というのは
各々の「大切な者、物」の優先事項がございますから
母にしてみれば
一番大切なのは自分の子供であって
犬ではないわけです。
ですから
高額になるであろう治療費を払うことになる「娘」の事を一番心配しているわけです。
「治る見込みはあるの?」
「多発性だからね。まぁ…完治はしないよね」
私の犬に対する思いと
母の犬に対する思いには確実に温度差があるわけですね。
この会話…ちょっと興味深いなぁ…と
客観的に思ったりした。
母はとても言いにくそうに
「まぁ…治らないのであれば…ねぇ…仕方がない…の…かねぇ…」と、
私の顔色を確認しながら
言葉を選んで言いました。
そこで私が
「じゃぁ…聞くけれども
自分の子供だったらどうする?」と、母に聞くと
「0.01%でも望みがあれば、それにかけるね」と、母は断言した後
苦笑いをしたので
私も「まぁ…そういう事ですよ。
私も早雲に対しては同じ気持ちかな」と、言って少し笑った。
結局、それから暫くして
早雲は治療の甲斐もなく死んじゃいました。
しかし
私と、第二のママであったスタッフの藤崎さんの腕の中で
静かに逝きましたし
また骨になっちゃう時にもスタッフ全員に見送られましたから
早雲は幸せだったと思います。
あれから暫く経ちます。
仕事が終わり、オフィスのPCの電源を落として
2階の階段を上がる時に
いつも早雲が階段の下で私を見送っていたのと
朝、オフィスに降りていくと
階段の下で待っていてくれたわけです。
本当にいなくなってしまったのだな…と、痛感するのは
この、朝晩の階段の時ですね。
本当に悲しいなぁ…と。
しかし
他の犬達の世話もありますからね。
悲しんでばかりはいられないのが実情。
結局、犬を失った悲しみを犬が癒してくれております。
ただ早雲だけは私に対してとても忠実で
犬ですけれども会話が出来たと申しますか
私が喋っているとジッと目を見て話を聞いてくれましたし
愛されているなぁ…と、実感できる事が出来ました。
娘時代に失恋すると
「二度とあんな人に出会えないもん」と、泣きじゃくったものですが
案外、それ以上の方に出会えるモンなんですな。
次の方…確実におりますね。
しかし、犬は…早雲みたいな犬には
二度と出会えないなぁ…と。
オトコは裏切る事があるかもしれませんが(←相変わらず病んでる?)
仕事と『犬』は決して裏切りませんな。