ゆう子先生とオークション

矯正のゆう子先生は診療の為
毎月第四金〜日曜日まで来ている。

しかし
最近はお陰さまで
矯正の患者さんの数が激増しており
木曜日の夜からうちに泊まりにくる様になってきた。

診療が終わると
彼女はうちに泊まりますから
おのずと3泊4日…一緒に過ごす事になる。

私がお馴染みの建築会社を営む
かず君から頼まれている建築物件に
ディスプレイするオブジェ類を
ネットのオークションでチェックしていたら
彼女もオークションに興味を持ち始めた。

ちなみに彼女は非常に堅実家。

もともと全国あちこちのクリニックに頼まれて行っているし
たまにある休みの日も
矯正学会やら講習会やらと忙しい。

非常に勉強家である。

しかし彼女も女性ですからね…。

ファッションにも所謂彼女流の
相当なこだわりがある。

長年の付き合いですから
「あ…このラインの服はゆうこが好きそうよね…」というのがわかる。

しかし彼女の買い物の仕方が
私から言わせれば非常に堅実なんですな。

そんな彼女が
私が見ていたネットオークションの画面を見て
「え?!!!
これが1000円?!!!」と、驚く。

「いやいや…。
これ、スタート金額だからね。
おそらくこれは50000円前後にはなると思うわよ。
それもかなりの激戦になると思うわ…。」と
元買い物依存症の私はせせら笑う。

へぇ…、と興味津々の彼女。

さて…
翌日、私のネットオークションの画面を見たら
彼女は勝手に入札していた。

笑いました。

私が寝静まった後
見よう見まねでやってみたのでしょう。

私は
「オークションは動向をみて
最後の5分前から動くのよ。
まだ最終落札日まで1日もあるのに入札してどうすんのよ!
無駄に値段が上がっちゃうだけじゃないっ!」と、苦言を呈した。

そして翌日…
彼女の入札したオークションの5分前
私はネットの画面を睨む…。

彼女はドキドキしながら私の横顔と
パソコン画面を交互に見守る。

予め、彼女の予算は聞いてあったのだが
案の定、延長戦の激戦になった。

ちょこちょこ値段がつり上がる。

彼女の予算は既に超えていた。

「ゆうこ…。もう、やめておく?」

「どうなの?チヒロさんだったらどうする?」

オークションの巨匠(?!!!)は
煙草の煙を吐きながら
「私だったら、もう少し勝負に出るわね。
だってこれ…定価で買ったらウン十万はするからね。
それに飽きのこないベーシックな物だからね。」

「じゃっ、もう一声!行きますかっ!」
やはりバリバリのキャリアウーマン。

決断力は早い。

しかし
さすがにゆう子先生の目の付けた物は
ものすごい人気で
私も絶句する程、値段がつり上がっていった。

通常、延長戦に入ると
一騎打ちになるのが常だが
今回はとにかく入札者が多い。

オークションはビギナーの彼女は
「とにかくチヒロさんに任せるから…」の一点張り。

結果的には
「ゆうこ、もう…この辺でやめましょう。」と、私。

いかんせん
堅実な彼女のお金ですから
あまり無理な勝負には出られない。

「こうやって値段をつり上げて
相手に高値で落札させちゃうのもアリなんですよ。
まぁ…負け犬の遠吠えだけどね。
そうやって、諦めるのも大切なわけ」

「あ…そうなんだ。
じゃぁ…諦める」

相変わらず頭の切り替えが早い。

しかしもう一点
彼女が狙っていたコートは
予算範囲内で落札できたので
ゆう子先生はご満悦の様でした。

彼女は
「いつもはデパートで買い物していたけど
オークションって面白いね」と
少女の様な表情で目をキラキラさせていた。

彼女は何事にも
非常に勉強熱心で極めるところがありますからね…。

変な事、教えちゃったかなぁ…。

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昭和大橋歯科医院 Dr.chicoの日記

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