昭和大橋歯科医院 Dr.chicoの日記
前橋の昭和大橋歯科院 院長Dr.チコの日々の想いを綴っています。
老後
開業当時から通って下さる患者さんのKさんは
現在70代前半の女性。
彼女は
「どうせお迎えも近いからさ」というのが口癖。
「Kさんから7年近くその台詞を聞いているけど
いっこうにお迎えが来る気配がないじゃないの。
肌の色艶もいいしさ。
案外、長生きしちゃうんだってば」と言う私。
「そうかなぁ…」と笑う彼女。
そのKさんが先日来院されて
またいつもの様に「お迎えが近い」と言いながら
「あの世にね…お金を持っていけるわけじゃないでしょ。」と彼女。
「そうね。三途の川の渡り賃は5銭だっていうものね」と、言うと
「そうなのよ、先生。
だから最近、う〜んとお金が使いたくなっちゃってね…
色々と散財しているのよ。
とにかく貯金を使い切っちゃいたいのね。
それでね
冷蔵庫とテレビも買い替えちゃったし
孫達全員にそれぞれテレビを買ってあげたのよ。
それから大きな石を買ってね、玄関に置いているんだけど
案外、それが邪魔なのよねぇ…。嫌になっちゃう。」との事。
「立ち入った事を聞くけどさ
Kさんの老後の面倒は誰がみるの?」と聞くと
「誰もみないわよ。」と笑う。
私はとてもKさんが心配になった。
人様のお宅の事ですから私が口を挟むのも
大きなお世話かもしれませんが…
これは親戚の人から聞いた話ですが
普通クラスの老人ホームに入っても
月額の基本料金の相場が平均17万円なんだそうだ。
そこにオムツを替えてもらうと
一回につきいくらという風にお金がかかり
その他諸々と換算すると
結局ひと月に25万円は必要らしい。
年間にすると300万円が最低かかるわけですよ。
彼女は歯がとてもいい。
1本も抜けた歯が無い。
「Kさん。断言するけど
Kさんは100歳まではいくわよ」と言った。
「だから家族にプレゼントをするのはいいけど
玄関の石は無駄遣いだね。
とにかく自分のために貯金は大切にしてね」と力説した。
その夜、仕事を終え
彼女とのやりとりを思い出し
「Kさんが心配だなぁ…」と言うと
夫が
「俺はお前が心配だよ」と笑っていた。
確かに。
買い物依存で浪費家の私ですから
まず自分の老後の心配をしなければいけませんな。