発表会

日曜日はピアノの発表会でございました。

まぁ…ここまでくれば命をとられるわけじゃなし
どうにかなるでしょう…という気持ちもあるが
緊張して落ち着かない。

矯正で来ていたゆう子先生は
「大丈夫よ。むしろそういった緊張感っていいじゃない?」とせせら笑う

もう…あんたは他人事に関しては沈着冷静だよなーーーっ!

こっちはそれどころではない。かなりナーバスになっている。

夫も
「『北の国から』のDVD全巻、ヤフオクで買ったんだよ。
いくらだと思う〜?」と、嬉しそう。

確かに「北の国から」はいい作品ですよ。

でも今はそんな事はどうでもいいっ!

「なぁ…いくらだと思う〜?」と、夫。

めんどくせぇなぁ…。

「2万位?」と私。

すると彼は勝ち誇った様に「9800円っ!」

あっそ。

もう…こっちはそれどころじゃなんだってばっ!

そして
発表会の現地に向かう車の中で
本来であれば課題曲を聴き込んでいけばいいのでしょうが
所詮、スピーカから流れるそれらはプロの演奏ですからね…
「やっぱりあそこはこう弾くべきか…」なんていう迷いが生じても困る…ので
ここはやっぱり気分を高揚させるためにセレクトした曲が
QUEENの「We are the champions」でしょ。

車の中で「うぃ〜あ〜ざ、ちゃ〜んぴおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんず…おぶざわーーーーーーー」と熱唱し
「私はチャンピオン!!!大丈夫!!!」と自己暗示する。

この日は
午前は仕事がありましたので
私はリハーサルが出来なかったんですよ。

ぶっつけ本番。

現地に着くと、すでに発表会は始まっていた。

私は19番目。

プログラムの序盤は小さいお子さんがメイン。

とても可愛らしい…けど
「可愛いわねぇ…」なんて言っている余裕がない。

緊張で手が震える。

いよいよ私の順番が近づいてくる。

足も震えてきた。
逃げ出したい。

そしてプログラムの18番目。

27歳の男性、Nさんのが弾く曲は
「ソナタ 悲愴 第二楽章」。

私はヘッドホンをしてiPodのスイッチを入れる。

フルボリュームで聴いた曲はBrian SetzerとBlack Sabbath。

要するに
Nさんの曲を聴きたくなかったんですよ…自信喪失するから。

観ない。聴かない。

iPodから流れるオジーの歌声を聴きながら現実逃避。
ツイッターでもつぶやいてみたりする。

Nさんの演奏終了。

そしていよいよ私の番。

iPodを切る。

「プログラム19番。五井 チヒロさん。
ソナタ 14番 月光」というアナウンス。

キャーッ!オジー助けてーっ!

無理無理無理無理―――――――――っ!

「もし間違ってもさ、知らん顔して弾くのよ。
演奏が途中で止まらなければ大丈夫」という妹の利江の言葉が脳裏をよぎる。

舞台袖で羽織っていたコートを脱ぎ
大きく深呼吸して舞台に上がる。

一礼。

ピアノの前の椅子に座り
椅子の高さを調節したり
足下のペダルの位置を確認する。

この一連の作業の間に気持ちを落ち着かせるのがコツらしい。

ポジションが決まると正面を見据える。

そこだけに集中して「ここはいつもの私の部屋。他は誰もいない」と言い聞かせる。

その時、患者さんでもあり大学の後輩でもあるまりあちゃんからの
「先生のいつもの『上から目線』で頑張って下さい!」というメールを思い出した。

そうだ。上から目線でいけばいいんだ!

「つかねー、私を誰だと思っているのよ!第二のフジコ・へミングよ!
その演奏を聴けるんだから、感謝してもらいたいぐらいよ。
耳をかっぽじって、よく聴いておきなさいよっ!」なんて考えてみたりもした。

自信過剰もここまでくると、我ながら感心する。

ゆっくりと深呼吸して鍵盤に手を置き…弾き始めた。

小さい頃に嫌で嫌でたまらなかったピアノを
再開したのが今年の8月。

夜遊びも行きたくなくなる程
楽しいピアノの練習。

まぁ…我ながら頑張って練習してきたと思う。

最後のレッスンでも先生から褒められた。

当日、自宅で最後に弾いたそれは
我ながら完璧だった。

しかし…結果として最悪だったんですよ!!!!

最悪っ!

緊張感はなかった。

ところが手と足が驚く程震える。

よく「頭の中が真っ白になる」という話は聞くが
ものすごく冷静だったと思う。

頭は冷静なのに手が震えるから鍵盤を押せない。

身体が思う様に動かない。苛つく。

そして演奏は
途中で止まってしまった。

気を取り直して弾く…けどもう…惨憺たるものでした。

頭の中で考えていたのは
「なんでこんなに震えるんだよ…もう…嫌。
抗痙攣薬とか飲んだ方がいいのかしら…はやく弾き終えたいなぁ…。
心筋梗塞のふりをして倒れちゃおうかな。」
という感じ。

あの経験は始めてですね。

それでも何とか弾き終えて一礼。

すると観に来ていてくれた義母と叔母から
ものすごーーーーーーい豪華絢爛な花束をもらう。

惨憺たる結果だっただけに
その大きな二つの花束をもらい
とても嬉しかったけれど
自分が全く弾けなかかった事の悔しさで
顔から火が出る程恥ずかしかった。

発表会が終わり
夫はだまって頭をなでてくれた。

義母と叔母は
「まぁ…初舞台だったんだからしょうがないわよ。
でもよかったわよ。一番奇麗だったわよ」と、慰めてくれた。

「一番奇麗」はあまりにも身びいきだし
全く関係ないと思ったが
身内の温かい言葉に涙が出そうになった。


その後、関係者に連絡をして結果報告。

「でもね、とにかく最後まで弾けただけでも偉いわよ」と妹の利江。

「先生の指は鍵盤は弾けなかったかもしれないけれど
患者さんの歯を治せる指なんですよ。
他の人は鍵盤は弾けるかもしれませんけど、歯は治せませんからね。
気にする事ないですよ」とスタッフのナカジ。

ナカジ…ありがとう…大好き。

「先生はさ、いつも完璧だからさ
“挫折”した事がないでしょ。
だから今回はいい経験をしたんじゃないの?
いや…むしろ先生にとっていい薬になったと思うよ」とスタッフの関。

これには苦笑い。
「いい薬」か…。
関は本当にいい事を言う。

家に戻りワインを飲む。

考えてみると関の言う通り
今までこんなに大失敗をしたとか
悔しい思いはした事がなかったかもしれない。

自分が情けなくて
夫の胸をかりて号泣した。

夫は発表会の事は何も言わず
「朝から何も食べてないんでしょ?飯でもいくか?」と彼。

「うん」と私。



さて…惨憺たる結果となったピアノの発表会ですが
もちろん来年もリベンジで頑張りますよ。

こんな非日常な経験は滅多に出来るものではない。

明日からまたピアノのレッスンは頑張ります。

ピアノ大好き!!!

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昭和大橋歯科医院 Dr.chicoの日記

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