トシちゃん

私は公の場所での人間ウォッチングが大好き。
ちょっと興味をそそられる人がいると
その人の近くに座り色々観察し
空想をふくらませるのが楽しいんですね。

先日
新幹線ホーム内でのコーヒーショップでのこと。

早速気になる母娘を発見。

隣の席に陣取る二人。
母の方は50代後半という感じ。
普通の人の良さそうな女性で大きなボストンバック一つに
土のついた野菜をパンパンにつめた紙袋やスーパーのビニール袋が多数。

その母の隣に座る娘。
20歳前後。
黄色の短いパンツからスラッと伸びた青白い痩せすぎの細い足を組み
ひっきりなしに煙草を吸う。
肩まで伸ばした金髪の髪の毛のスタイリングが気になるようで
不機嫌そうに何度となく鏡を見ている。
全身のあちらこちらに
よく若い方が入れているファッション性の高いタトゥーを施している。

「えぇ?ねくさす?れくさす?あそ、黒い車だね!!
お兄ちゃんは黒い車が好きだもんねぇ〜。
うん。うん。わかったよ。
3時過ぎには駅に着くから。」と、嬉しそうに携帯電話で話す母。

そして電話を切ると隣に座る娘に
「お兄ちゃんがね、黒い車で迎えにきてくれるってさぁ。
新しい車買ったらしいよ。また黒いの。
あれ?なんだったっけ…」

すると娘はくわえ煙草で鏡から目を離さず
「レクサス」とまた不機嫌そうに答える。

おそらく東京に住む息子に会いに行くのでしょう。
不摂生になりがちな息子の食生活を心配した母は
畑でとれた野菜をいっぱいもって上京し
今夜は沢山の手料理を作ってあげるつもりなのでしょうな。
そして東京が不慣れな母に
仕方ないから嫌々同行している妹…という推理をして
満足そうに一人頷く私。

そして母はその娘をトシちゃんと呼び
上機嫌で話しかけるが
肝心のトシちゃんはとにかく無愛想。

あのさぁ…トシちゃん。
何が気に入らないのかしらないけど
そんなにぶっきら棒にしなくてもいいんじゃないのぉ?
お母さんが可愛そうじゃないの。

だいいちちょっと煙草の吸いすぎですよっ…って、同じくくわえ煙草のガラの悪いオバサンに言われたくねぇかもしれないけどさぁ…。

「ね、トシちゃん、何か飲む?お母さんアイスコーヒー飲むけど。」終始上機嫌な母。

「…らね(いらねぇ)」終始不機嫌な娘。

しばらくして…
東京行きの新幹線の到着を知らせるアナウンスが関内に響くと
慌てて沢山の荷物をまとめ始める母。

すると今までずっと不機嫌に煙草を吸い続けていた娘がパッと立ち上がり
山になった吸殻が入った灰皿をカウンターへ返し
手際よく荷物をまとめると全部一人で持ち
さっさとホームの方へ向かって歩き出した。

「トシちゃん、お母さんも一つくらい持つよう」と母は娘の後を追いかけたが
「いいからっ」と言い捨て
野菜が沢山入った紙袋を抱えて歩いて行った。

あれぇ?トシちゃんっていい子じゃないのぉ。
ナンだカンだ言っても
ちゃんとお母さんの荷物を全部持ってあげるんだからねぇ。

オバサン感動〜っ!

要するに終始不機嫌そうだったのは
野菜をいっぱい抱えた母と一緒にいる自分が
人目を気にして何となく気恥ずかしかったのね。
そういう年頃だもんね。

何となくわかるなぁ〜。

私も学生時代そうでした。

下宿先に時々母が訪ねてくるのですが
タッパーに色々食べ物をつめて
何故か地元のスズランというデパートの紙袋に入れて持ってくる。

そして手際よく食事の支度をしてくれました。

それは大好きな母の味でとても懐かしくて嬉しいのですが
そんな姿を友人に見られるのが何となく気恥ずかしくて
「いらないって言ってるでしょう?」とぶっきら棒に迷惑そうにした覚えがある。

そんな年頃なんですね。

あのタトゥーだらけのトシちゃんも
歳を重ねて自分の家庭を持つ頃には
「お母さんありがとうね」と言えるようになるだろうなぁ〜と
ちょっと胸がキュンとする気持ちになりました。

これだから人間ウォッチングはやめられません。

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昭和大橋歯科医院 Dr.chicoの日記

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